2021/12/12
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50肩でもなく、腱板断裂でもない
肩が痛くて、整形外科を受診しました。
レントゲンを撮っても異常なしなのに、いつまでも肩の痛みが続く。
50肩のように関節が固まっているわけではないのに、肩の痛みが続く。
そんな時は、上腕二頭筋の断裂を疑うことも必要です。
上腕二頭筋とは、腕の「力こぶ」のところです。
通常はこんな感じですが、
断裂すると、ポパイの腕のように、ポコンと一部だけが盛り上がったようになります。
肘を曲げる力がおよそ8%減少し、手のひらを返す回外の力がおよそ21%減少します。
腕を外に返す(外旋)ときに痛みを感じます。
解剖学的に切れやすい位置にいる
上の図の青い部分が上腕二頭筋の長頭腱と呼ばれる部分です。
筋皮神経という神経によって動きます。前腕の外側がしびれるような時も同じ神経です。
この腱は、上腕骨の結節間溝という溝に走行していまして、大変、摩擦を受けやすい所にあるのです。
それに加え、丸い構造ではなく、「きしめん」のように平べったい構造になっているため、より切れやすいのです。
この筋肉の動きの作用としては、「肘を曲げる」「手のひらを返す」ときに使います。解りやすくいうと、お釣りをもらう時の形になります。
骨にくっついている所も厄介
筋肉が骨にくっつくところを起始といいます。
上腕二頭筋の長頭腱は、肩甲骨の関節上結節という所まで伸びてくっ付いています。
下の図の赤い所です。その手前に青い所があります。そこは、関節唇と言いまして、膝の半月板のような役目をした軟骨です。後上方関節唇(関節唇の後上方側)にも上腕二頭筋の長頭腱はくっついています。
ということは、上腕二頭筋を痛めると、この後上方関節唇を同時に痛めてしまう事(SLAP損傷)も少なくないのです。また、上腕二頭筋を損傷することにより、上腕骨頭上方化と言い、上腕骨が上に引き上げられ、肩の関節の位置関係が異常になってしまうことも関節唇を痛める原因となります。
筋肉と関節唇の両方を痛めれば、関節の中に炎症が強く出るため、その後、50肩のように、肩関節が拘縮してしまう事も少なくありません。
どうやって見分けるべきか
1、力こぶを作ってみて、ポコンと出っ張らないか見てみる。
2、肩の前側に痛みがある
3、肘を曲げる力が弱い
4、手のひらを返す力が弱い
5、体の前から逆の肩を触ろうとすると、特に痛い
などにより、ある程度、自己判断が可能です。詳しい検査は、MRI撮影によってわかります。
手術が必要?
上腕二頭筋というだけあって、片方が切れても、もう片方の上腕二頭筋短頭があるので、ほとんど手術する人はいません。スポーツで力が必要な人や、見栄えを気にする人のみ手術をするようです。
2~3週間、安静に保つのが一般的です。