2020/10/01
その名の通り、もともとはテニスをする人に多く見られる症状でしたが、最近ではテニスをしないのに「テニス肘」の症状を訴える人が増えているのです。なぜ??
目次
テニスをしないのにテニス肘!?の謎
指や手の関節を伸ばす筋肉には、長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋、総指伸筋などがあり、これらが相互に作用することで手首や指が伸びるはたらきをしています。
上に挙げたような伸筋の腱組織は、上腕骨の一部である「外側上顆」と呼ばれる肘の外側にあたる部分に付着しています。ものを持ち上げたり、手をひねったりする動作を繰り返すと、慢性的に外側上顆に炎症が引き起こされ、結果として上腕骨外側上顆炎が発症します。主に短橈側手根伸筋が付着する部位で、障害を受けることが多いと考えられています。
上腕骨外側上顆炎と関連した動作を慢性的に繰り返す状況としては、テニスが代表的です。上腕骨外側上顆炎はテニス選手に発症することが多いことから、別名「テニス肘」とも呼ばれています。
しかし、実際には、家事を通して同様の動作を繰り返す機会も多く(たとえば雑巾を絞るなど)、テニスをしたことのない主婦に発症することもまれではありません。一般的には、加齢とともに腱が傷んで起こるとされていますが、原因についてはまだ十分にわかっていないのが現状です。
上腕骨外側上顆炎の症状は、ある一定の動作をしたときに腱の付着部位である肘の外側が痛むことが特徴です。たとえば、ものをつかんで持ち上げる、タオルや雑巾を絞る、といった動作に伴って痛みが生じることがあります。その一方で、安静にしているとき(すなわち、筋肉の動きを伴っていないとき)には痛みが生じないことが多いです。
テニス肘の原因の一つは「くり返しの負担」です。テニスやゴルフなどで繰り返し動作をすること、または仕事で重いものを持ったり、赤ちゃんを抱いたり、そのような繰り返しの負担によってテニス肘は生じてしまいます。
もう一つの原因は年齢です。45歳くらいからテニス肘になる人が急に増えます。もちろんそれよりも若くてもかかることはありますが、中年以降に圧倒的に増えます。これには理由があります。テニス肘の正体は「外側上顆」という骨のでっぱりのところに「異常な血管が増えてしまう」ことだと考えられています。
この異常な血管というのは、実は中年以降で増えやすくなってしまうのです。しかも血管だけでなく神経線維も一緒に増えてしまうため、痛みの原因になります。異常な血管が肘にできると「テニス肘」になり、肩にできると「四十肩・五十肩」と言われる状態になります。
実は、パソコンのキーボードやマウスの操作でも、長時間、手首を反らす形でキーボードやマウスを使うために、テニスのバックハンドでかかるような負担が、腕の筋肉や腱にかかり続けるのです。
検査法
上腕骨外側上顆炎は、身体診察における検査によって診断されます。代表的な検査には、Thomsenテスト、Chairテスト、中指伸展テストの3つが挙げられます。いずれのテストも、動作に関連して肘の外側が痛むかどうかを確認します。
Thomsenテストでは、肘を伸ばした状態で患者さんに手首を反らしてもらいます。医師は患者さんが反らした手首に抵抗を加えます。このときに肘の外側に痛みを感じるようであれば検査陽性と判断されます。
Chairテストでは、肘を伸ばした状態のまま患者さんに椅子を持ち上げてもらいます。このときに肘の外側に痛みを感じるようであれば、同じく検査陽性です。
中指伸展テストでは、肘を伸ばしたままの状態で、医師が患者さんの中指に抵抗を加えます。患者さんには指全体を伸展してもらいますが、このときに肘の外側に痛みを感じるようであれば上腕骨外側上顆炎と診断されます。
また、上腕骨外側上顆炎では局所のレントゲン写真を撮影することもあります。レントゲン写真は多くの場合、異常所見は認めませんが、ときに伸筋腱が付着する部位の骨に病的な変化がみられることがあります。
手首を動かした時に、肘の一部にピンポイントで痛みが走る様なら要チェックですね。
テニス肘の予防法
テニス肘の予防には、手を使い過ぎないということが一番ですが、以下のようなケアをしっかり行うと、発症予防や症状の改善に効果的です。日頃からこまめに行うように心がけましょう。
①肩や腕のストレッチ
ストレッチはテニス肘の予防だけでなく、痛みの緩和にも効果があります。
「肘をピンと伸ばした状態で手首を曲げ、30秒間静止した後リラックス」というストレッチを数回繰り返すと良いでしょう。腕全体や手首をゆっくり回すだけでも効果があります。
②筋力トレーニング
症状が長引き、慢性化したテニス肘は、筋力を強化するためのトレーニングが有効です。
軽めのダンベル(重さ1㎏程度)やチューブを使い、手首の関節の曲げ伸ばし運動を行います。ただし、痛みや熱感などのある時は、症状が悪化する恐れがあるため、行うのは止めましょう。
③サポーターまたはテーピング(肘、手首)
肘や手首にかかる衝撃を吸収することができるサポーター(テーピング)は、日常生活で発症したテニス肘にも効果がありますが、特にテニスなどのスポーツが原因で発症したテニス肘には有効です。幅が広いタイプと狭いタイプがありどちらも市販されているので、使いやすいものを試してみると良いでしょう。
④アイシング(冷却)または患部の温め
痛みが出始めた急性期は、熱を持っている状態なので、氷などで患部を冷やすと痛みが和らぎます。ただし、痛みが数ヶ月に及び、慢性化してしまった場合にはアイシングは逆効果。温めることで痛みが軽くなるので、お風呂で温めるのもおススメです。
パソコン操作が原因の方は、マウスレスト・キーボードレスト・デスクトップシェルフ(液晶モニターを置く台)等を活用してなるべく手首が反りかえらない環境づくりが大切です。
テニス肘は軽症であれば一定の期間(数週間)で治りますが、重症となると簡単には治りません。
治療をしているのに治らない、という場合は、いま受けている治療が「痛みの原因」に正しくアプローチしていないからかもしれません。
テニス肘の痛みの原因は「異常な血管とその周りに増えた神経」です。この痛みの原因にアプローチしないと痛みは治りません。半年経過しているのなら重症である可能性がありますから、ぜひ専門の医療機関を受診されることをお勧めします。
テニス肘に効くストレッチ
ここでは2つのストレッチを紹介します。 いずれもやり始めは少し痛みがあるかもしれませんが、15秒ほど続けるのを1回とし、1日に3-4回してみてください。
ストレッチ①
痛いほうの手を前方に肩の高さまで持ち上げます。手のひらを下にむけた状態で肘は伸ばします。反対の手で、痛いほうの手の甲を下向きに抑えます。すると前腕の一部の筋肉が伸びて、張りを感じると思います。この状態で15秒伸ばします。
ストレッチ②
痛いほうの手を前方に肩の高さまで持ち上げます。手のひらを上に向けた状態にします。反対の手で痛いほうの手の指先を下向きに抑えます。すると前腕の一部の筋肉が伸ばされて張りを感じると思います。この状態で15秒伸ばします。
テニス肘にはマッサージ
テニス肘は筋肉を反復して動かすことにより炎症が生じる症状です。
炎症に対してはアイシングなどの措置を取ることで痛みを緩和するのが一般的ですが、テニス肘に関してはアイシングと共にマッサージをすることで、症状の緩和を促すことが可能といわれています。
マッサージによって期待できる効果は、適度に筋肉を刺激することで、テニス肘において硬くなりがちな筋肉を柔らかくすることです。
肘周辺の筋肉が柔らかくなると、炎症を起こしている筋肉への負荷が和らぎ、痛みが緩和できる確率が高まります。
テニス肘対策としてマッサージに取り組もうと思っている人は、正しい手順をマスターすることを心掛けましょう。
肘の動きには複数の筋肉が関わっており、手順を間違えると刺激する予定ではない筋肉にアプローチしてしまうこともあります。
こうなると、マッサージ本来の効果が得られなくなるケースも考えられるので、正しい手順を意識してください。
【手の甲のマッサージ】
最初に紹介するのは手の甲から肘の痛みを間然するマッサージです。
こちらのマッサージでは手指の筋肉が肘を動かす筋肉と繋がっていることを利用します。
実際にマッサージをする部位は、手の甲の中でも中指の延長線にあたるエリアです。
直線状にマッサージするのではなく、中指の付け根から数センチ、手の甲の中心付近を広く揉み込むのがポイントになります。
マッサージする際には、まず肘に痛みを感じていない側の親指を掌にあてましょう。
親指を固定したまま、人差し指と中指で挟むようにしながら、手の甲を揉み込みます。
揉んでいる間は、マッサージを受けている側の手を揺らすのもポイントです。
30秒から1分程度継続しましょう。
【肘を直接マッサージ】
テニス肘に効果的なマッサージとしては、肘を直接刺激する方法もあります。
まずは、肘を軽く曲げたとき、外側に小さく盛り上がる筋肉を視認してください。
その筋肉に人差し指と中指、薬指をあてたら指の腹で優しく摘むようにマッサージしましょう。
押し込むというよりも軽く引きながら筋肉を刺激すると、過度な負荷をかけることなく筋肉を刺激することができます。
押したときに肘から指先にかけて痺れを感じてしまう場合は、肘の痛みが進行している証なので、優しく揉むことを心掛けましょう。
※ただ、ここで注意が必要なのが、どうしてもセルフでマッサージをすると、強く揉みすぎてしまったり触ってはいけない箇所を揉んでしまったりすることです。これでは全くの逆効果になってしまうので、きちんと専門的な知識のあるところでマッサージを受けるのが一番良いとでしょう。